Archive for 6月, 2012

がん細胞死滅の仕組み解明でがん新薬へ

火曜日, 6月 12th, 2012 | Permalink

がん細胞だけを死滅させる仕組みの一端が解明された。これによって副作用の少ない新薬の開発が期待される。

愛知県がんセンター研究所が、人間などの哺乳類の細胞にある突起物「一次線毛」の働きを利用し、がん細胞だけを死滅させる仕組みを解明したのだ。

細胞の一次線毛は細胞に一つずつ存在しており、細胞分裂を起こす時は隠れている。アンテナを伸ばすように一次線毛が細胞から突き出ると、細胞分裂が停止するのだ。しかし、この一次線毛はがん細胞には存在せず、がん治療への応用が期待されていた。

研究グループでは人間の子宮頸(けい)がんの細胞と正常な網膜細胞をそれぞれ培養し、一次線毛の働きを抑え、細胞分裂するのに必要な酵素「オーロラA」をそれぞれの細胞から取り除き、2、3日置いて観察した。その結果、がん細胞の方は中途半端に細胞分裂が進み、異常な状態で停止した上、自浄作用が働き死滅することが確認できた。一方、正常な細胞は一次線毛が飛び出し、正常な状態を保ったまま細胞分裂が停止したという。

研究成果は米科学誌「ジャーナル・オブ・セルバイオロジー」に掲載。

9割以上に効果の肺がん新薬

火曜日, 6月 12th, 2012 | Permalink

肺がん治療の新薬は「ザーコリ(一般名クリゾチニブ)」を、効果の高い患者だけに投与するための新しい検査手法が開発された。

「非小細胞肺がん」の患者のうち、ALK融合遺伝子があるのは約3%。新薬ザーコリはこのALK遺伝子を持つ肺がん患者には著しい効果を示すが、ALK融合遺伝子の無い患者には効果が無い。

ALK遺伝子を持つ肺がん患者ならザーコリによる治療で9割以上でがん(腫瘍)が縮小するが、 ALK遺伝子の無い肺がん患者には、間質性肺炎や吐き気などの副作用で負担が増えるだけなのだ。従い、治療前に抗がん剤の適合性、つまりは「標的=ALK遺伝子」の有無を調べる正確な診断が必要となっていた。

しかし、従来の検査法はがん細胞の塊(組織)が必要で、腫瘍の位置が分かりにくい肺がん患者の検査は難しかった。

新診断法は細胞だけで確実にALK遺伝子の有無が検査できるため、効果の有る肺がんだけを治療対象に限定できる。効果の無い肺がん患者に無駄な治療をすることが回避できるのだ。

治療効果が見込まれる患者を選んで薬を投与する治療を『オーダーメード医療』と呼ぶ。不要な副作用に苦しむことなく治療効果の高い抗がん剤だけでがんが治せる時代を迎えつつある。