Archive for 4月, 2012

がん再発原因の発見から新薬開発へ

火曜日, 4月 3rd, 2012 | Permalink

がん再発防止にがんが生き残る仕組みを解明

従来のがん治療は抗がん剤地路湯や放射線治療によって、がん細胞を死滅させた。しかし、がん幹細胞が生き残れば、がん細胞が再び増殖することが多く、がん患者は常にがん再発に脅かされていた。がん再発の原因は、がんの基で体内でがん細胞を造り続ける「がん細胞」の存在だ。乳がんが治療の10~20年後に再発する原因は、抗がん剤も放射線も効かないがん幹細胞が存続し続けているからなのだ。

今回は、体内のがん幹細胞が生き残るのに必要なタンパク質を自ら分泌していることが発見された。発見された「ヘレギュリン」と呼ばれるたんぱく質が 細胞膜に付くと、がん細胞内の遺伝子に信号が伝わり、NFκ(カッパ)Bという物質が増加し、がん増殖やがん転移に適した環境を整えていた。

抗がん剤や放射線治療でもなかなか死滅しないがん細胞では、この特定のたんぱく質が細胞膜にくっつき、がん増殖やがん転移、がん再発を引き起こしていると断定された。実際に再発率の高い乳がん患者ではヘレギュリン濃度が高い傾向があることは既知だった。

この 特定のタンパク質が がん細胞が体内で増殖能力を維持する仕組みを妨害できれば、革新的な新しい乳がん治療新薬が開発できだけでなく、がんの再発をも高い確率で防止できる可能性が高まった。

東京大医科学研究所の後藤典子准教授(がん生物学)らのチームが乳がん患者から摘出したがん細胞を培養し、発見した。研究論文は、2日付の米科学アカデミー電子版に発表された。

がん分子標的薬を継続する方法

火曜日, 4月 3rd, 2012 | Permalink

分子標的薬は、がん細胞を増やしたり、がん組織に血管を引き込んだりする特有の分子(主にタンパク質)の機能を止めることで、がんの成長を抑える新しい概念のがん治療薬の総称。大腸がんの治療に対しても、がん増殖に関わるタンパク質の働きを抑える分子標的薬が、四年前から複数登場。手術が難しいがん再発がんの治療に使われ、生存期間の延長に著しい効果が得られている。特定の分子を狙うため、がん細胞の遺伝子のタイプによって効果の有無が違う。

がん細胞だけ狙って攻撃する新しいがん治療薬「分子標的薬」は、大腸がんや肺がんなどのがん患者への治療効果が極めて高く、新薬も相次いで登場している。
がん治療に用いられる分子標的薬の特徴は、従来の抗がん剤のように正常細胞にも打撃を与えることで脱毛や吐き気などの副作用を起さないこととされていた。がん細胞に特有の分子をピンポイント攻撃することで、がん細胞の成長を止めたり、殺したりするからだ。

しかし、分子標的薬は、まだ発展途上であることから、皮膚細胞など正常な細胞も一部攻撃してしまうことは、知られていない。分子標的薬特有の副作用が出やすい薬も複数あり、慎重な治療対策が課題になりつつある。
副作用の多くは、分子標的薬の標的となるタンパク質が皮膚や爪を作る細胞にも存在するため発生する。皮膚や爪の細胞も同時に薬の攻撃を受けてしまい、皮膚などに炎症が出るのだ。副作用の例としては、腎臓がんや肝臓がんの分子標的薬ネクサバールは、手足の皮膚が腫れて痛む「手足症候群」が出やすく、慢性骨髄性白血病の分子標的薬グリベックは、かゆみを伴う赤い発疹が出やすい。

分子標的薬の副作用で最も多いのは、顔などに出るにきびのような発疹。新しい皮膚がうまく作れないため皮膚が薄くなって乾燥することで、かゆみがひどくなったり、指先が割れて痛む。酷い場合には、手足の爪の周りが腫れ、靴を履くことや手仕事が難しくなる場合さえある。副作用の増悪は抗がん剤治療の継続可否にも影響を及ぼす。
しかし、皮膚障害の治療法はほぼ確立されているので、早めに正しい処置で対処することで治療継続は可能だ。にきびのような発疹には炎症を抑える効果のミノサイクリンなどの内服抗生剤やステロイドの塗り薬が有効。適切な薬や保湿剤を使ったスキンケアに努め、日焼け止めや、炎症を抑えるステロイド薬を塗ることで、皮膚障害の重症化を防ぐことができる。また、爪の周囲に炎症が起きた場合には、皮膚科医によるテーピングが痛みを和げる。
足が腫れて痛みのある場合には、履物選びでも症状が改善し、がん患者の生活の質が大幅に上がることもある。

症状が出てから対応するのではなく、分子標的薬の治療を開始する前日から内服抗生剤を飲むことが重要なのだ。

「分子標的薬は、皮膚障害が強いほど生存期間が長い」との研究報告も複数ある。がん治癒に対する抗がん剤の効果を最大化するためにも、副作用を抑えることは軽視できないのだ。