Archive for 3月, 2012

2週間で肺がんが消えた特効薬とは

月曜日, 3月 19th, 2012 | Permalink

2週間でがん細胞がほぼ消滅した肺がん治療薬

日本人のがん死亡原因の第1位は肺がん。毎年7万人近くが肺がんで命を失っている。

1980年代以降に分子生物学が発達したことで、がん細胞の増殖や転移に関係するがんに関連する遺伝子の解明が進んだ。
肺がんには、小細胞がん、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの4種類があるのだが、
2000年代初頭では、まだ肺がんは、小細胞がんと、それ以外の非小細胞がんの2つに分類することだけで、
肺がん治療法が決定されていたのだ。

その後、がん細胞の働きを抑制する新しいタイプの抗がん剤である分子標的薬が開発された。
肺がんに関する分子標的薬は、2002年にゲフィチニブ(イレッサ)、2007年にエルロチニブ(タルセバ)が保険薬として承認された。
旧来の抗がん剤はがん細胞だけでなく正常細胞も攻撃してしまうために、
治療効果よりも副作用が強く、がん細胞に対する効果が不十分な場合が多かったのが問題だった。
しかし、新開発の分子標的薬はがん細胞で活性化している特定の分子だけをターゲットにするため、
がん細胞だけに特異的に作用し、効果が高く副作用が少ないのが特徴とされた。
しかし、当初の肺がん分子標的薬は、副作用が酷く、医療訴訟にまで発展してしまったのだ。

その後、2004年に、イレッサを初めとする分子標的薬の向き不向きに関して、遺伝子内に指標があることが確定された。

日本では肺がんの70%が腺がん だが、この半数近くにEGFR遺伝子の変異が認められる。
イレッサやタルセバはEGFR(上皮成長因子受容体)という遺伝子の変異に対する薬だが、
EGFR遺伝子突然変異がある肺がん患者に対して、分子標的薬が劇的な効果があることが判明した。
著効例では、イレッサ投与後の2週間でがん細胞がほぼ消滅した例もある。

逆には、EGFR(上皮成長因子受容体)が認められない場合には、
効果が期待薄で、激しい副作用が発現する可能性が高いことから、
治療前の遺伝子検査が推奨されるようになったのだ。

イレッサは日本を含むアジア人、女性、非喫煙者の肺がん、特に腺がんに効果が高い特効薬なのだ。

がん促進酵素とがん抑制酵素

月曜日, 3月 19th, 2012 | Permalink

がんの進行を抑制する万能酵素が世界初で発見された。全ての種類のがんの抑制や転移に効果があるという新発見酵素とは?

 
肺がん、リンパ腫、乳がんや子宮がん、骨髄がんなどの 全ての がん細胞には、共通して「Akt」という酵素が、異常に活性化していることが既に知られていた。
このAkt酵素は、がん細胞の成長を促すだけでなく、がん細胞を他の臓器へ転移させるのにも関わっているのだ。
また、がん細胞に、抗がん剤への耐性を持たせ、がん再発も手助けしてしまうのもこのAkt酵素で、これこそが がん促進酵素なのだ。

Akt酵素の悪しき振る舞いについては1990年代末までに確認されはいたが、肝心のAkt酵素を抑制する物質や方法については、まで見つかっていなかった。
しかし、韓国の建国大学・微生物工学科のアン・ソングァン教授とべ・スンヒ博士が、Akt酵素を分解するタンパク質分解誘導酵素の「ムーラン(Mulan)」を発見した。

つまり、ムーラン(Mulan)をがん細胞へ作用させれば、がん成長を抑制し、がん細胞を殺せる酵素であることが確認されたのだ。
研究チームでは、ムーラン(Mulan)酵素がAkt酵素の284番目のアミノ酸に取り付いてAkt酵素の分解を誘導することで、がん細胞の進行を抑制することが確認したのだ。

Akt酵素は、ほぼ全ての種類のがん(癌)に関わっている。これを抑制できるムーラン(Mulan)酵素をうまく活用できれば、全てのがんを抑制し、再発予防できる全く新しい概念の抗がん新薬の開発が期待されるのだ。