Archive for 3月, 2012

すい臓がんに有効な家庭薬

金曜日, 3月 23rd, 2012 | Permalink

膵臓がんを予防できる安く安全で手軽な方法が発見された。

鎮痛剤アスピリンを毎日服用することで、がんの発病が予防できるのだ。この興味深い研究は、医学誌ランセットに21日発表された。

鎮痛剤アスピリンを毎日少量服薬した人は、3年後にがんを発病する確率が服用しなかった人よりも24%も低下する。さらに、量に関わらず毎日アスピリンを飲んだ人は5年後にがんで死亡する確率が37%低下。このがんリスク低下現象は男女によらず、効果が見られた。また、アスピリンの副作用とされる内出血のリスクも3,4年で低下するとされた。

アスピリンは、約2400年前の古代ギリシア医学者のヒポクラテスの時代に起源を持つ鎮痛剤。柳の樹皮に含まれるサリシンという成分が原材料になっている。今では、薬局で1粒約2円50銭程度の安価で購入が可能だ。

既に2007年には、アスピリンが長期的にがんによる死亡の確率を低下させると、研究報告がされていた。しかし、がん予防効果を得るには8年以上の継続摂取が必要とされていたのだ。ところが、今回の研究では、短期間でもアスピリンにはがん予防効果があることが判明したのだ。さらにがん治療にも利用できる可能性が示されている。
アスピリンは安い価格と、高い安全性という2点で、非常に有効ながん予防策にできる。

家族にがん、特にすい臓がん患者を持つ人は、アスピリンを日常的に服用することでがんリスクが低下する可能性が高いので、強く推奨される。

急所遺伝子を攻撃すると肺がん消滅

木曜日, 3月 22nd, 2012 | Permalink

肺腺がん細胞の急所発見

日本人の死亡率第一位のがんの中でも、最も患者の多い肺がん。その肺がんの中で最も多い肺腺がんのがん細胞の生死を決定する遺伝子が発見された。発見したのは名古屋大大学院医学系研究科の高橋隆教授と山口知也助教らのグループ。

2007年には、高橋教授らは肺腺がんに特に多いTTF1という遺伝子を発見していた。しかし、TTF1はがん細胞だけでなく正常な肺の機能にも必要であり、当時は肺腺がんが引き起こされる仕組みまでは解明されていなかったのだ。

その後に人間の肺腺がんの細胞株を使った実験で、TTF1が出現させるROR1というタンパク質が、肺腺がんを生存させるか、細胞死させるかを決めていることを突き止めた。マウスに肺腺がんの細胞株を移植し、ROR1を抑制すると肺腺がんが細胞死し、がん細胞は増えなくなったのだ。

現在の肺腺がんの治療薬としては、「イレッサ」がよく使われるが、別の遺伝子を標的にしているため服用から1年程度で耐性ができてしまい、抗がん剤が効かなくなる例が報告されている。しかし、イレッサへの耐性ができた場合でも、ROR1を抑制することで、がん細胞の増殖が抑えられることも確認された。

国内の肺がん患者のうち、非喫煙者の女性はほぼ肺腺がんとされる、最も症例数が多い肺がん。狙うべき遺伝子がROR1と特定されたことで、抗がん効果の高い特効薬の開発が期待されるようになった。

研究論文は、米がん専門誌キャンサーセル(電子版)に発表された。