手術支援ロボットを使った精密手術

最新のロボット手術で行う前立腺がん手術は、旧来の開腹手術の場合と比較して、 手術時の患者の負担軽減はもとより、 術後の後遺症(排尿障害・性機能障害)にまで大きな差が出る。 前立腺がん手術の後遺症の原因は、 がん摘出手術時に隣接する血管や神経を傷つけてしまうことが原因。 手術の対象が非常に微細な血管と神経が交錯する部位であるために、 残念ながら術後に問題が残ることが大前提での手術が従来の術式だった。 日本での前立腺がん手術は、今だに開腹手術が中心で患者は後遺症リスクを負いつつ、 執刀医の個人的な技量と自身の幸運を祈るしかないのが実情だった。 しかし、米国では既に90%以上の前立腺がん手術はロボット手術に移行し、 後遺症の発現は最小化されている。 患者の運、執刀医の技術の優劣は、 手術機械の進化によって均一化され、リスクを最小化された手術を受けることができる。

手術を受けるがん患者のメリット

ロボット手術で前立腺がん手術を受けると、 「痛みが最小」 「回復までの最短」 「傷跡が最小」 「失血量が最小」。 これは大きな患者のメリットだ。

切開範囲の激減

ロボット手術では小さな穴(約1cm)を4箇所に開けるだけで、 従来(現行)の開腹手術のように大きく体を切り開く必要は無い。 最小の切開面積はそのまま患者負担の最小化とも言える。

出血量の減少

ロボット手術では切開範囲がわずか穴4つ分であることが大きい。 さらには、 手術精度が高いことで血管を傷つける可能性も低く、 出血量は最小化できる。 出血量は手術リスクの大小を測れるので患者のリスクと負担の減少だ。 旧来の開腹手術での前立腺がん手術は、 平均500~600ccの出血が不可避だったが、 ロボット手術では約100ccの出血に抑えられる。 この出血量の差はロボット手術の有用性を如実に示している。

患者負担が激減

手術で切開される範囲が少ないために、手術後の患者の体力回復は早い。 ロボットがん手術の2日後には歩行開始、7日後には退院できる程の回復ぶりだ。 旧来の開腹手術が退院まで1ヶ月以上を要するのと比較すると雲泥の差と言える。 ロボット手術は、術後の患者の体力・免疫力の低下をも最小化されるので、 がんの再発・転移予防にも効果的なのだ。

後遺症の激減

前立腺がん手術では、近隣の神経や血管が手術部位が交錯しているために、 神経/血管を傷つけずにがんだけを切除することが非常に難しかった。 しかし、ロボット支援による前立腺がん手術では、 非常に高い精度の手術切除が可能になったために、 血管・神経を傷付ける可能性は低くなった。 つまりは、手術後に後遺症となる排尿・性機能の障害が発生するリスクも 大きく減ったのだ。

医師の技量以上に高精度の手術が可能

前立腺がん手術は、隣接する神経と血管を温存すために微細な手技が不可欠で、 手術を執刀する医師に高い技術力が不可欠だった。 しかし、実際には技術の高い執刀医でさえも、 微細な神経を全て温存する手術は困難であったのだ。 ロボット手術では、 一部の名医だけに可能だった高精度で後遺症の残らない手術を 一般の執刀医でも慎重さと機械操作を身に着けることで、可能にした。

なお、ロボット手術の現場では、 患者に開けた1~2cmの小さな穴から4本のロボットアームを挿入し、 手術台横の執刀医が操作して手術される。 ロボットアームの先端に装着された内視鏡や超音波メスを、 内視鏡の3Dハイビジョン画像を見ながら執刀医が操作するのだ。 医師がコントローラを操作すると患者の体内でロボットアームが医師の動きを再現する仕組み。

視認性の向上

ロボット手術は、患者の体内に挿入した内視鏡で患者の体内を立体画像(3D)、 かつハイビジョンの高画質で観察しながら操作される。 ズーム拡大(15倍)が可能なので、

手術処置しているがん患部の直前に執刀医の目があるように詳細に観察できるのだ。

操作精度の向上

執刀医の指の5cmの動きに対して、ロボットアームは1cmの動きで対応する。 執刀医は大きな動きで操作することで、精緻な手術作業を実施できるために、 がん患部での手術精度が高いのだ。

震えを抑制削除

人間に不可避な指先の微細な震えが原因で、血管や神経を傷つける可能性があった。 ロボット手術では、患者体内のロボットアームへ 操作する執刀医の指先の動きを伝える間に、 「指先の震え」はノイズとしてフィルタリングして除去できる。 そのために、不慮に神経や血管を傷付けることが激減できたのだ。

導入実績

米国は90%以上がロボット手術

高精度に前立腺がんを執刀できる手術ロボットは、 米ナスダック上場の米イントゥイティブ・サージカルが製造している 「ダ・ヴィンチ(da Vinci Surgical System)」。 米国では前立腺がん手術の90%はこの手術ロボット「ダ・ヴィンチ」で手術されている。

子宮がん手術への適用

ロボット手術の対象は前立腺がんが主だったが、 米国では、既に前立腺がんの手術だけでなく、子宮がんの摘出手術にもロボット手術ダヴィンチでの手術実施が進んでいる。 今後は、手術精度が要求される精密手術の大部分が がん患者の負担とリスクを減らす目的でロボット手術に置き換わっていく見込みだ。

日本では まだ30施設のみ

日本へのダヴィンチ導入台数は2012年でもまだ30台前後。 まだ国内の前立腺がん手術の多くは、 従来の医師の技量に頼ったリスクの高い開腹手術が主流だ。 手術ロボット「ダヴィンチ」が導入された稀少な病院でも ロボット手術の経験を積んでいる医師はまだ少ない。随時に特別な研修を受講している。 ロボット手術の100例以上の実績を持つ病院で手術を受けるのだ賢明だろう。

高額な機器代がネック

ダヴィンチ・システムの1台の価格は100万~170万USドルなので、日本円換算では8300万円~1億4000万円(83円/US$)とシ機器代がかなりの高価なのがネックだった。

保険適用が承認

2012年4月保険適用

日本でも、2012年4月1日からロボット支援前立腺全摘除術は、 先進医療として保険適用となった。 2011年度末までには全額自己負担の高額医療の扱いだったために自己負担の金額が約140万円と非常に高額だったが、それも昔話となった。
ロボット手術の保険承認されて以降は、前立腺がんを患う全員がロボット手術の恩恵を受けられるようになったのだ。 つまりは、旧来の前立腺がん開腹手術は今後はリスクの高い旧治療法となり、 手術ロボットの無い病院での前立腺がん手術自体がリスクと認識されていく。 最新、最善を期すなら、手術支援ロボットが導入済みで、手術経験の多い病院での、前立腺がん治療が望ましいのだ。