乳がん・腎臓がんに既存抗がん剤併用が著効!最新の治療法

乳がんと腎臓がんに新治療法

乳がんと腎臓がんに新治療法が発見された。 既存の抗がん剤の組み合わせで著しい効果が確認されたばかりでなく、 特に難治性乳がんへの効果が朗報と言えるだろう。

乳がん

乳がんが発症する確率(罹患率)は30歳代から増加し、 50歳前後にピークを迎えて、その後次第に減少する。

乳がんにかかる女性の数は多く、乳がんで死亡する数の3倍以上。 国別の傾向としては、東アジアよりも欧米の乳がん罹患率が高く、特に米国白人が高い、 しかも、米国の日本人移民が日本国内在住者より乳がん罹患率が高い傾向があるのは興味深い統計だ。 イギリスでも年間約5万人の乳がん患者が発症している。

乳がんの罹患率、死亡率は年々に増加傾向にあり、 近年に生まれた人ほど乳がんを発症する確率が高い傾向にあるという。 アメリカでは胃がんと乳がんを合わせて約8万人の患者がいる。

中でもトリプルネガティブ乳がんとは、 主要因子といわれる

  • HER2(ヒト表皮細胞成長因子2)
  • エストロゲン受容体
  • プロゲステロン受容体

が全て陰性であるにも関わらず発生する乳がんのことで、 治療が極めて困難で、生存率も低い難治がんの一種。 (HER2受容体に異常がある場合には、乳がん特効薬とも言える抗がん剤が既に開発されている)

腎臓がん

腎臓がんの罹患率は、50歳から70歳まで増加し、死亡率は男性が女性の約3倍とされている。 腎臓がんはすい臓がんと同じく自覚症状が殆ど無いため、 がんが発見された時には、末期がん、ステージ4の場合が多いことが問題なのだ。

乳がんと腎臓がんの治療

乳がんと腎臓がんの治療に既存の抗がん剤である「デシタビン」と「ロミデプシン」を 併用投与することでがん治療に高い効果が期待できることが発見された。 それぞれの抗がん剤単独では効果無いが、 併用することで抗がん剤として高い治療効果が発揮されることが判ったのだ。

「デシタビン」はDNAメチル化阻害剤、 「ロミデプシン」はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤で、 それぞれに、白血病つまり血液がんの抗がん剤治療薬として既にFDAの承認を受けている。

「デシタビン」と「ロミデプシン」は、単独使用ではがん細胞は死なない。 しかし、発見された抗がん効果は、 2つの抗がん剤を併用すると、 がん抑制遺伝子が活性化され、がん細胞の増殖を止められたのだ。

がん抑制遺伝子とは、がんの発生を抑制する機能を持つタンパク質をコードする遺伝子だが、 がん抑制遺伝子が何らかの変異が原因で機能障害が生じた場合には、 直接的にがん化の原因となってしまう重要な遺伝子なのだ。

併用での実験では、乳がんおよび腎臓がん細胞の異なる細胞株を全て死滅させる「sFRP1遺伝子」 を活性化させるという結果が得られたという。 特に乳がんの中でも、治療が困難なトリプルネガティブ乳がんに対しても、 細胞株への効果は顕著だあったことは特報に値する成果だと言える。

このsFRP1遺伝子に関する研究は、 今回発見された乳がんと腎臓がんの新治療法だけでなく、 他のがん治療への応用に関しても研究は進められる予定。 「sFRP1遺伝子」を活性化させてがん細胞を叩く治療法が確立できれば、 多くのがん治療は飛躍的に前進する可能性が高いため期待は大きい。

世界中が注目する新がん治療法の研究は、 米国ロチェスターの病院メイヨークリニック(Mayo Clinic)で実施されている。