肺がん新薬を国内承認

分子標的薬に期待高まる

承認された肺がん新薬は、「ザーコリ」(ファイザー製造, 一般名クリゾチニブ)。 2012年3月30日に新薬として厚生労働省が承認した。

ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)は、肺がんの特定の原因遺伝子だけを攻撃する分子標的薬なのだ。 肺がんの原因として特定されている遺伝子「EML4-ALK」を持つ肺がん患者の約90%に対して、 非常に高い効果が発揮されるため肺がん特効薬との期待を集めてきた。

ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)は、当初は消化器がんの治療薬として開発されていた。 しかし、2007年に肺がんの原因遺伝子「EML4-ALK」が発見され、 この遺伝子にザーコリ(一般名:クリゾチニブ)が効果的に作用することが判明したことから、 開発対象を肺がん治療へ変更し、開発・治験に成功した。

肺がん特効薬と言えるほどの高い効果が特徴のこの肺がん新薬は、 原因遺伝子EML4-ALKを持つ患者に対しては、高い確率で大きな効果が望める。 反面、薬の攻撃対象となる原因遺伝子を持たないがん患者には、 副作用のみで効果は皆無である。 効果の有無の明確化は分子標的薬の特徴でもあるので、 肺がん治療を受ける患者は治療開始前に遺伝子検査が不可欠だ。

この肺がん新薬は、全世界で今後10年に50~60万人の命を救うされる待望の新薬なのだ。

これ以外にも肺がんに関しては、 2012年にROR1というタンパク質が肺腺がんの原因遺伝子TTF1に関連していることが解明された。 この原因タンパク質を攻撃対象とする分子標的薬が肺がん新薬として開発開始されている。

全てのがんは遺伝子異常によって発病、増殖、転移、再発することは解っており、 それぞれのがんの原因遺伝子が続々と解明されている。 そして、それぞれの特定分子を攻撃対象とした分子標的薬が、続々と開発されつつある。 これらの分子標的薬は、それぞれの特定のがんに対して「がん特効薬」となる可能性が高い。

がん新薬の開発とその対象が遺伝子レベルとなった今日、 全てのがんに特効薬が並び揃う日は近づいていると期待できるだろう。